魔法使い(東京書籍・英語教材DVD『Can Anyone Hear Me?』アニメーション 2011)



 中学生の英語・ヒアリングおよび読解などの教則用として、星新一氏の名著『おーい でてこーい』のアニメーションを作成させていただきました
 およそ4分のショートアニメーションです 作成に当たって、あまりに有名で、映像化も多数あるので、まずはどこにも引っ張られないよう、改めて映像作品は見ないようにしました ともすれば雰囲気がとても重くなってしまうので、なるべくポップな画面に、かつ人物や所作が感情的にならないよう、ギリギリまで無表情にしてみました
 教材なので何度も見ることになると考えられるので、繰り返しの視聴に耐える工夫が必要と感じたため、色味と素材感にこだわってみました(様々な作品が納められるであろう教材の中で差別化を図る意味もあります)


 サンプル動画です(音量注意/圧縮率高いです)※Quick Timeプラグインが必要です
 打ち合わせ時にはまだ朗読する人物等決まっていなかったのですが、「10歳前後の子供はどうか」との提案が通ったので、統一された雰囲気は出たと思います 当初より、子供か女性にする、という事だったようですが
 圧縮で素材感は判りにくいですが、人物の描線→くっきり黒実線/服→布をスキャンしたもの/車両等の色→お菓子の包装紙や、鉄等の素材を撮影したもの/背景→表面のでこぼこした水彩紙をテクスチャとして使用/空→実写映像 と、なっております
 空の映像は、制作会社の方に趣味で空の撮影をしてらっしゃる方にいただきました HDサイズの撮影が出来る機器を持っていなかったので助かりました


 そのほか、作中に大量に登場する「ゴミ」は、実際のゴミ写真を使ったりしています さすがに放射性廃棄物はふつうのドラム缶にマークを描いたものですが トラックの荷台を本物のトラックの荷台の写真にしたり、ダンプカーのボディのキラキラをギターのキラキラ塗装で再現したりと、妙な部分にこだわってみました


 この作品でキーになるのは人物ではなく、「空」だと考えたので、空が印象的になるように…というもくろみはおおむね達成できたように思います


 制作の手順として、まずキャラクター/ビジュアルのデザインからスタートしました 人物は極初期、匿名性(ある特定の個人でなく、誰でもある、という意味合い)を全面に押し出す為に上の画像左のようにすべてコラージュで組み立てようと考えましたが、ちょっとキャラが立ちすぎたためにやめました
 その後は匿名性を、シンプルさで表現することにしました この頃、「ゴミ捨て場としての活用を画策する男」を重要視しすぎているため、怪しさ満点です


 ビジュアルイメージの作成と同時に、アニメーションの雰囲気を伝える為に、ざっくりとしたサンプルムービーも作成しました※Quick Timeプラグインが必要です
 今回のように「人物はアニメで、背景は紙で、空は実写で…」と口頭で言っても伝わりにくい場合は、なるべくイメージが明確に伝わるように本編作成前に可能な限り様々なサンプルを作成/提案します


 キャラクターおよび全体のイメージが固まったら、コンテを作成します ここで各シーンのだいたいの尺が決まってきます(全体の尺は、依頼の段階で「だいたい3分〜5分に収めて」などの指示をいただくことが多いです) これを基に「このシーンは重要なのでもっと尺をとって」「ここはカットしてもいい」と言った具合に、具体的に詰めてゆきます


 主にアドビ社「AFTER EFFECT」で作成しています 納品データ形式はMPG、連番画像など用途に応じて対応いたします
 
 余談になりますが、震災後に受けたお仕事でしたが「おーい でてこい」は星新一氏の1958年の作品との事で、その問題意識の高さには本当に驚かされました
 制作途中に、星氏の親族の方によるチェックが入り、完成後も見ていただいたようで、大変恐縮しました 親族の方が運営されておられる星氏のアーカイヴサイトにも映像化作品としてこの拙作がクレジットされております いろいろと感慨深い仕事となりました